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住宅会社が広告代理店を切り替える前に。変えても結果が同じになる2つの構造

2026.09.18 | ナレッジ

毎月レポートは届く。表示回数、クリック数、順位。だが来場につながっているのかは分からない。担当者は3年前から変わっていない。悪い人ではないし、付き合いも長い。

「最近、成果が落ちている気がする」。そう感じてはいるが、確信が持てない。周囲からは「代理店を変えたほうがいい」と言われる。だが、変えて良くなる保証もない。

先に結論を書く。代理店を切り替えても結果が変わらないケースには、はっきりした構造が2つある。ひとつは予算規模、もうひとつは自社に判断軸がないことだ。このどちらかに当てはまっているなら、切り替えは解決にならない。同じことが2〜3年後に繰り返される。

この記事では、切り替えを判断する前に確認すべきことを順に書く。専門用語は出てくるたびに言い換える。

住宅会社が広告代理店の切り替えを考えるとき、最初に見るべきは自社の側

まず、いま起きている状態を正確に言葉にしたい。

多くの経営者が止まっているのは、「代理店が良いか悪いか」を判断する材料を持っていない地点である。レポートは届く。だがそこに書かれているのは表示回数やクリック数といった数字で、それが多いのか少ないのかを比べる基準が社内にない。

だから判断は感覚に寄る。「担当者の対応は悪くない」「以前より反響が減った気がする」。この2つを天秤にかけても、答えは出ない。

そして時間だけが過ぎる。決められないまま契約は自動更新され、気づけば3年、5年が経っている。

ここで押さえておきたいのは、この状態は代理店を変えても解消しないという点だ。判断材料がないという問題は、相手が変わっても残る。次の代理店のレポートも、同じように読めない。

だから順序が逆になる。代理店を評価する前に、自社が評価できる状態にあるかを先に見る。そのうえで初めて、切り替えるべきかどうかが判断できる。

月20万円の広告予算では、どの代理店に変えても結果は同じになる

もうひとつ、経営者があまり知らされていない構造がある。代理店のビジネスモデルの話である。

広告運用を代理店に任せる場合、報酬は広告費に対する手数料で決まるのが一般的だ。相場は広告費の20〜25%前後。ここに自社の数字を当てはめてみてほしい。

月20万円の広告予算なら、代理店の売上は月4〜5万円である。

この金額で、代理店が1社にかけられる時間を考える。月4〜5万円の売上から人件費と会社の利益を差し引けば、担当者が投下できる工数は月に2〜3時間というのが現実的な線になる。

月2〜3時間で何ができるか。定例のオンライン会議に1時間。レポートの作成と送付に1時間。それで終わる。クリエイティブを新しく作り直す時間は、そもそも残っていない。

だから何が起きるか。

  • バナーが数か月同じままになる。特に顕著なのが、無料相談会や資料請求のような常時開催の告知だ。半年前と同じバナーがそのまま回っていることは珍しくない
  • 見学会の広告が1パターンしかない。しかも物件が変わっても、レイアウトもテイストも前回と同じ。写真だけ差し替えて日付を打ち直したものが配信されている
  • 担当者に新人が付く。経験のある人材は、月100万円以上を預けている案件に張り付く。月4万円の案件は、育成中のメンバーが持つことになる
  • 改善提案が薄くなる。「もう少し様子を見ましょう」で数か月が過ぎる

ここで大事なのは、代理店が不誠実だからこうなるわけではないということだ。会社として利益を出す以上、売上規模に応じて人員配分を決めるのは当然の経営判断である。責めても構造は変わらない。

誤解のないように書いておくが、クリエイティブを作り直し続けること自体は、本来やるべきことである。同じバナーを回し続ければ反応は必ず落ちる。訴求を変え、テイストを変え、反応を見て残すものを決める——この繰り返しが成果を作る。ここは動かない。

問題は、それが誰からも言い出されないことにある。代理店の側は、前述の工数の計算上そこまで手が回らない。そして住宅会社の側にも、「クリエイティブは毎月変えるべきもの」という感覚を持っている人が少ない。バナーが半年同じでも、それを異常だと思わない。両側が気づかないまま、同じ広告が回り続ける。

だから、代理店を変えても次の代理店でも同じ計算が働く。変えるべきは代理店ではなく、任せ方である。

この構造を知っているかどうかで、次の面談の中身が変わる。「なぜクリエイティブを変えてくれないのか」ではなく、「この予算だと月に何時間くらい見てもらえますか」と聞けるようになる。相手も答えやすく、話が具体になる。

丸投げのまま切り替えても同じことが起きる。判断軸が残らない3つの損失

予算の構造に続いて、もうひとつの構造を書く。丸投げの状態である。

外注に任せること自体は問題ではない。専門性や作業量が必要な領域は、外注のほうが効率的である。問題なのは、任せた結果として判断軸が社内に一切残らない状態だ。

具体的に何が失われるのか。

  • ①ノウハウが社内に残らない——何をやっているのかが見えないまま数年が過ぎる。担当者が代わっても、契約が終わっても、社内には何も蓄積されていない。
  • ②提案を評価する物差しがない——次に別の代理店から提案を受けても、良し悪しを判断できない。だから決め手は「感じが良かったから」「安かったから」になる。
  • ③成果が出ても再現できない——今月うまくいった理由が説明できないので、来月も同じことができない。逆に、悪くても理由が分からない。

この状態が長く続くと、笑えない事態が起きる。実際に、来場1件を獲得するのに15万円以上かかっていたのに、社内の誰も疑問を持たなかった会社がある。適正な水準を知らなければ、異常値も異常に見えない。

広告費を払い続けていたが、実際にはほとんど運用が行われていなかった会社もある。300万円かけてホームページをリニューアルしたのに、予約数がまったく変わらなかった会社もある。見た目は新しくなったが、予約に至る仕組みが何も変わっていなかった。

これらはすべて、判断軸が社内になかったために起きている。代理店を切り替えても、この構造はそのまま持ち越される。

自社の内製化レベルを5段階で測る。Lv.1以下なら切り替えより先にやることがある

では、自社はいまどの状態なのか。5段階で測ってみてほしい。

レベル 状態 経営リスク
Lv.0 完全丸投げ 外注の言いなり。数字も見ていない 致命的
Lv.1 報告受け取り 数字は見るが判断はできない 高
Lv.2 判断軸あり 数字を見て改善方向を指示できる 中
Lv.3 一部内製 基本施策は自社、専門領域だけ外注 低
Lv.4 内製化完成 自社判断+外注を戦略的に使う 最小

目指すべきはLv.3〜4である。そしてLv.1以下にいる会社は、代理店の切り替えより先にやることがある。

ここで誤解を解いておきたい。内製化とは、すべてを自社でやることではない。外注を使いこなしながら、自社に判断軸が残っている状態のことである。

自社に最低限の知識と判断力があれば、外注は強力なパートナーになる。なければ、何をしているか分からない箱になる。この差は、外注先の質ではなく、自社の状態で決まる。

Lv.1から抜けるためにやることは、そう多くない。月に1回、経営者が広告の管理画面を自分で開く時間を30分取る。届いたレポートを「報告」ではなく「議論の材料」として扱い、必ず1つは質問を返す。それだけでもLv.2に近づく。(住宅会社がGA4で最低限見るべき指標についてはこちら)

担当者の質を見抜く4つの観点と、見直し時に出る6つのサイン

予算と自社の状態を確認したうえで、ようやく相手の評価に入る。

前提として押さえておきたいのが、代理店の良し悪しは会社の規模や実績ではなく、担当者個人の質で決まるという点だ。同じ代理店でも、担当者によって提案内容も成果も大きく変わる。住宅営業でも営業担当次第で結果が変わるのと同じ構造である。会社のロゴや事例数ではなく、目の前の担当者を評価する。

見るべき4つの観点

  • ①広告以外の知見があり、提案の幅が広いか——広告の話しかできない担当者は、打ち手が広告の中でしか出てこない。住宅会社の集客は、広告・ポータル・チラシ・看板・SNS・紹介が組み合わさって成り立つ。「その予算なら広告よりポスティングのほうが効きます」と言える相手のほうが、結果的に成果を出す。
  • ②エリア特性を理解している、または理解しようとしているか——同じ広告でも、都市部と郊外、県庁所在地と周辺市町では反応がまったく違う。商圏の人口動態、競合の顔ぶれ、土地相場——ここを知っているか、知らないなら聞いてくるか。「御社の商圏はどこまでですか」を初回に聞かない相手は、エリアを見ていない。
  • ③難しいことを「難しい」と言ってくれるか——これが最も差が出る観点である。住宅会社側から「予算10万円で10組集めたい」という要望が出ることは実際によくある。だが来場1件の獲得コストは3〜5万円が相場で、10万円で取れるのは現実的に2〜3組だ。ここで「やってみます」と受ける担当者と、「その予算なら2〜3組が上限です。10組を狙うなら30万円以上か、広告以外を組み合わせる必要があります」と返す担当者では、1年後の関係がまったく違う。できない約束をしない相手のほうが、長く付き合える。
  • ④一次情報を取りに来るか——ここが本質かもしれない。優秀な担当者は、必ず自分で情報を取りに来る。「来場アンケートを見せてください」「営業の方に話を聞かせてもらえませんか」「実際のお客様に会えませんか」——こう言ってくる相手は、自社の商品特性と顧客特性を自分の目で確かめようとしている。逆に、ヒアリングシート1枚で提案を作ってくる相手は、どこかで見た型を当てはめているだけの可能性が高い。

実力を見抜く3つの質問

次の面談で、そのまま聞けばいい。

  • 「うちは◯◯エリア中心ですが、何が効果的だと思いますか」——自社の商圏・商品・営業体制を踏まえた答えが返るか。「いまYouTubeが流行っています」のような流行りの施策を持ち出す相手は、こちらの状況を見ていない
  • 「最近のお客様の動きに、どんな変化があると思いますか」——住宅会社の広告は、最終的に施主に響かなければ成果が出ない。優秀な担当者は「実際のお客様に話を聞かせてほしい」と言ってくる。エンドユーザーから逆算して考えられるかが分かれ目になる
  • 「いまの広告の反応がイマイチですが、課題はどこにあると考えますか」——「会社の状況」「市場の動き」「ユーザー心理」の3点をバランスよく踏まえた返答ができるか。過去の成功体験だけで話す相手は、変化を捉えられていない

見直し時に出る6つのサイン

次のうち、いくつ当てはまるかを数えてほしい。

  • レスポンスが遅い
  • 成果についての説明責任が弱い(なぜこの結果になったかを説明できない)
  • 付き合いの長さだけで発注が続いている
  • 管理画面の操作スキルが低い(設定変更に時間がかかる、聞いても分からない)
  • レポートを深掘りして質問すると答えられない
  • 「3か月ほど様子を見てください」と言ったまま、何も改善しない

最後のひとつは特に注意したい。改善のサイクルが3か月単位という時点で、いまのスピード感には合っていない。様子を見る期間に、本来なら10回の改善ができる。

ただし、これらのサインが出ていても、前章までの構造を思い出してほしい。月4〜5万円の売上で動いている担当者に、月10回の改善を求めるのは無理がある。サインの原因が相手の質なのか、予算規模なのかを切り分ける。ここを混同すると、切り替えても何も変わらない。

相場を知らないと判断もできない。住宅マーケの外注費用の目安

判断材料として、相場を持っておきたい。相場を知らずに発注すると、相場の1.5〜2倍の見積もりでも気づかずに払い続けることになる。

制作物・サービス 相場の目安
LP(1ページの申込ページ)制作 15〜20万円
ホームページ全体のリニューアル 200〜400万円
バナー1枚 5,000〜2万円
Meta広告の運用代行 月10〜20万円、または広告費の20〜25%

あくまで目安であり、クオリティや実績によって上下する。ただし「LP制作の相場は15〜20万円」と知っているだけで、30万円の見積もりに一度立ち止まれる。その一拍が効く。

見積もりを受け取ったときの手順も決めておきたい。

  • 必ず内訳を出してもらう。総額だけの見積もりは受け取らない
  • 各費目が相場と乖離していないかを確認する
  • 「SEO対策一式」「ディレクション費」など曖昧な項目は、中身を具体的に聞く
  • 複数社から見積もりを取り、相場感をつかむ
  • 値引き交渉より「適正価格かどうか」を見極める姿勢で臨む

なお、高くても払うべきケースはある。それに見合う品質と実績があり、自社では同等のものを作れず、中長期で見て投資に見合う場合だ。過度な値引き要求は、後回しにされたり品質が落ちたりする形で返ってくる。納得して払えるかどうかが基準になる。

予算規模別の付き合い方と、切り替える前に試す3手

ここまでを踏まえて、実際にどう動くかを書く。

予算規模で、任せ方を変える

代理店との付き合い方は、広告予算の規模で変えるべきである。

月20万円未満の場合
代理店に運用を任せる前提を、いったん外す。手数料が月4万円前後では、相手も動けない。クリエイティブの制作と配信設定を自社でやり、分からない部分だけスポットで相談する形のほうが、成果も学びも残る。いまはツールの側が使いやすくなっており、住宅会社の広報担当が自社で回している例は珍しくない。(Meta広告とGoogle広告の使い分けについてはこちら)

月20〜50万円の場合
役割を分ける。クリエイティブと訴求は自社、技術的な設定と計測まわりは外注。ここは社内の人間にしか書けない中身(自社の坪単価、施工実績、施主の声)が成果を左右する領域なので、外に出しても薄いものしか返ってこない。

月50万円以上の場合
ここで初めて、代理店に本気の人員配置を求める交渉ができる。「担当者を指名したい」「月何本のクリエイティブを作ってほしい」といった要望が、相手のビジネスとして成立する水準になる。契約前に、月あたりの想定工数とクリエイティブの本数を書面で確認しておきたい。

切り替える前に試す3手

いきなり解約に進む前に、順に試せることがある。

  • ①担当者の変更を依頼する——会社ではなく担当者の問題であるケースは多い。長い付き合いがあるほど言い出しにくいが、これは正当な要望である。担当者を代えてもらうだけで改善する例は実際にある。
  • ②並行して別の会社から提案を受ける——解約を前提にせず、比較材料を作る目的で提案を受ける。前述の4つの観点と3つの質問をぶつければ、いまの担当者との差がはっきり見える。差がなければ、問題は相手ではなく予算構造か自社側にある。
  • ③自社で触れる範囲を作る——広告の管理画面を月1回開く。イベントページの数字を自分で見る。この範囲を少しずつ広げることが、そのまま判断軸になる。

経営会議に上げる6つの数字

最後に、判断軸そのものを作る話をしておく。次の数字を毎月の経営会議に上げる。これだけで、代理店の評価は劇的にやりやすくなる。

  • 来場1件あたりの獲得コスト(広告費 ÷ 来場数)
  • 来場数
  • 予約率
  • 媒体別のパフォーマンス(Meta広告・ポータル・チラシ、どれが効いているか)
  • 次アポ率

避けたいのは「今月は◯件来場できました」で終わる報告である。「Meta広告から◯件で1件あたり◯万円、ポータルから◯件で◯万円、紹介が◯件。先月との差は△△が原因で、来月は××で改善する」——この形で語れるようになれば、どの代理店と組んでも判断できる。

まとめ

代理店を切り替えるべきかどうかは、相手を評価する前に、2つの構造を確認することで決まる。

ひとつは予算である。月20万円の広告予算では、代理店の売上は月4〜5万円にしかならない。その規模で投下できる工数は月2〜3時間で、定例とレポートで消える。クリエイティブを毎月作り直すのは本来やるべきことだが、この予算ではどの代理店に変えても出てこない。相手の誠実さの問題ではなく、計算の問題である。

もうひとつは自社の判断軸である。丸投げのまま切り替えれば、ノウハウが残らず、提案を評価できず、成果を再現できない状態がそのまま持ち越される。来場1件に15万円かかっていても、誰も気づかない。

だから順序はこうなる。予算規模に合った任せ方に変える。自社に最低限の判断軸を作る。そのうえで、なお相手が動かないなら切り替える。

外注に求めるべきは、答えそのものではない。判断材料と選択肢である。どれを選ぶか、今回は何を優先するか——それを決めるのは、いつまでも自社の仕事だ。

切り替えるべきは、相手ではなく任せ方である。

AUTHOR- この記事の執筆者 -

代表取締役社長
手塚 恭庸
代表取締役社長
手塚 恭庸

住宅業界向けSaaSの立ち上げからIPOまでをCMOとして牽引。
営業・プロダクト・組織設計まで一貫して手がけ、1,000社超の住宅会社のDXと業績改善に貢献。
コロナ禍ではオンライン販売モデルの構築を支援し、デジタル集客・来場・成約までを仕組み化。
「考える力」だけでなく「やり抜く力」を強みに、机上の空論で終わらせない支援を信条とする。
現在はG-Forceの代表取締役社長として、クライアントにとって外部パートナーではなく、“事業の一員”として本気で成果にコミットするサービスを展開。

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