×

住宅会社で広報と営業の連携が集客を決める。営業から吸い上げる6つの顧客情報と4つの仕組み化

2026.09.18 | ナレッジ

「先月の来場3組の方、なぜ当社に来られたんですか?」。地方の中小住宅会社の広報担当に、経営者からこの質問が飛ぶ。答えられない広報担当が非常に多い。Meta広告のCPAは3〜5万円で追えている。チラシは月2回、Instagramは週3回投稿している。来場も月5〜20件は取れている。だが、その来場者が「何を見て」「なぜ今」「なぜ当社の」イベントを選んだのかは、広報の手元に何も残っていない。

原因はほぼひとつ、営業と広報の連携がないことである。営業担当は来場者と1〜2時間話して、来場のきっかけ・過去の検討先・エリアの希望まで聞き出している。だが、その情報は営業担当の頭と手元のヒアリングシートに埋もれ、広報には流れてこない。結果、広報は次のクリエイティブや訴求を「担当者の勘」と「先月の勝ちバナーの継続」で決める。ここで、集客の質が伸び悩む。

住宅会社の集客改善は、広告運用の技術論だけでは頭打ちになる。来場者が「なぜ来たか」を営業から吸い上げ、その一次情報を次のクリエイティブと訴求に反映するサイクルを回すこと。ここが動かないと、いくらMeta広告の運用を磨いても、CPAは下がらないし来場数の質も上がらない。

なぜ住宅会社の広報と営業は連携できないのか。3つの構造的な壁

広報と営業の連携が動かない住宅会社には、共通した3つの壁がある。まず、この壁を認めないと仕組み化の話に進めない。

第1に、部署が物理的に別で、情報を渡す時間がない。地方の中小住宅会社でも、営業と広報は座席は近いが、日々の業務は別々に走っている。営業は商談・来場対応・追客で忙しく、広報は広告運用・SNS・チラシ制作で手一杯。「今日の来場者の様子を教えて」と広報から声をかけても、営業は「後で」と返して、そのまま流れる。この「後で」を仕組みで潰さない限り、情報は永遠に渡らない。

第2に、情報を渡す型がない。仮に営業が「今日来た方は面白い方でしたよ」と話しかけても、広報はメモを取り、後日何かに活かすことができない。渡されるのが「面白い方」レベルの粒度だと、次の広告改善に反映しようがない。共通のヒアリングシートも、記録のフォーマットも、社内で整備されていない会社が多い。型がないから、情報は雑談で消える。

第3に、広報がヒアリングの重要性を認識していない。「マーケの仕事は広告運用とSNS投稿」と自分の役割を定義していると、営業が持っている一次情報は「営業の仕事」に見える。だが、次のクリエイティブを勘で決めるか、来場者の生の声を根拠に決めるかで、成果は大きく変わる。広報担当が「営業から情報を取りに行くのも自分の仕事」と再定義するところから、連携は始まる。

この3つの壁は、どれも仕組みと発想の転換で越えられる。

営業から必ず吸い上げるべき6つのお客様情報

住宅会社の広報が営業から取るべき情報は、以下の6つに整理できる。1組の来場者から、6つ全部を毎回聞ければ理想。難しくても、少なくとも①〜④は必ず聞く。

  • ①来場のきっかけ(何を見て、いつ)——「今日は何を見て来場されましたか」を必ず聞く。Meta広告のバナーなのか、Instagramの投稿なのか、チラシなのか、ポータルサイトなのか、紹介なのか。加えて「それはいつ頃見ましたか」まで踏み込む。「1週間前にInstagramで見て、昨日Meta広告で予約した」というパスが分かれば、SNSと広告の連携効果が可視化できる。
  • ②なぜ今のタイミングで来場しようと思ったのか——家づくりを検討し始めた時期と、来場を決めた時期は違う。「半年前から検討を始めて、今月土地が見つかったので動き始めた」「上の子が来春小学校に上がるので、それまでに引き渡したい」など、来場の直接のトリガーを聞く。この情報が広告のコピーづくりに直結する。
  • ③なぜ当社のこのイベントだったのか(他社との比較)——「他社さんも見ていますか」「その中でなぜ当社に来られましたか」。他社比較の中で自社が選ばれた理由が、そのままイベントページのコピーの種になる。「◯◯というモデルハウスが写真で気に入った」「他社は予約制じゃなくて気軽に行けそうだった」など、勝ちの理由が具体で拾える。
  • ④当社を元々知っていたのか、初めて知ったのか——「初回接触」なのか「以前から知っていた」なのかは、広告の役割を変える。初回接触が多いなら広告の役割は「認知」寄り、以前から知っていた方が多いなら広告は「背中を押す」役割。ここが逆だと、広告のクリエイティブの方向性が根本から間違う。
  • ⑤SNSはフォローしているか、いつからフォローしているか——「Instagramはフォローしていただいていますか」を必ず聞く。フォロー率と、フォロー期間の長さ(数日前・数か月前・1年以上前)で、SNSが集客に効いているかどうかが分かる。フォロー期間が長い来場者が増えているなら、SNSは効いている。ゼロならSNSの投稿方針を見直す。
  • ⑥現在のエリアと希望する建築エリア——「今どちらにお住まいですか」「建築予定はどのエリアで考えていますか」「なぜそのエリアがご希望ですか」を聞く。ここは住宅マーケの中でも特に重要な情報になる。集まったエリア情報を集計すると、月別・季節別で反応が良いエリア、逆に配信しているのに来場に繋がらないエリアが可視化される。Meta広告の配信エリア設定の絞り込み、チラシ配布エリアの最適化、野立て看板の設置場所判断、そして次のモデルハウス立地戦略まで、複数の施策に一気に反映できる。「なぜそのエリアか」まで踏み込めば、勤務地・実家近く・子どもの学区・地元愛着など、住宅会社が知っておくべき生活背景まで見える。

6項目を毎回全部聞くのは営業の負担が大きいので、まずは①〜④の必須4項目から始めるとよい。慣れてきたら⑤⑥も加える。

集めた情報をマーケがどう使うか。クリエイティブ・訴求・ターゲティングへの反映

6つの情報が営業から流れてくるようになったら、次はマーケ側の使い方である。集めるだけで使わないと、営業のヒアリングコストは無駄になる。反映先は主に3つ。

反映先①:反響が良かったバナーの共通点抽出
「今月来場した10組のうち、8組がMeta広告のAバナーを見て来られた」という情報が出れば、そのAバナーの共通点(写真の構図、コピーの切り口、色調)を分析して、次のバナー制作の基準にする。逆に「Bバナーは10万円使ったが1組も来場に繋がらなかった」なら、そのバナーの型は次から避ける。この判断が、これまで担当者の勘だったのが、来場データを根拠にできるようになる。

反映先②:新規訴求軸の言語化
6項目の②「なぜ今のタイミングで来場したか」③「なぜ当社を選んだか」の答えを月10〜20組分集めると、共通する訴求軸が浮かび上がる。「共働き夫婦の家事動線」「子どもの入学に間に合わせる引き渡し」「他社にはない平屋の間取り自由度」など、これまで広告で言えていなかった訴求が言語化される。これが次のイベントLPやチラシのコピーの起点になる。

反映先③:配信エリア・SNS投稿テーマの最適化
6項目の⑥エリア情報を使うと、Meta広告の配信エリアの絞り込みと、チラシの配布エリアの最適化が根拠を持ってできる。反応の良いエリアには配信予算を厚く、反応の薄いエリアは切る。⑤SNSフォロー期間と①来場のきっかけを組み合わせると、SNSが集客にどう効いているかも見える。フォロー期間の長い来場者が多いテーマの投稿(施工事例・現場ブログ・スタッフ紹介など)を強化し、CVに繋がらないテーマを減らす。

3つの反映先に共通するのは、担当者の勘ではなく、来場者の生の声を根拠に判断が動くことである。この根拠があると、経営者への説明も一段強くなる。

広報と営業の連携を仕組み化する4つの型

情報を吸い上げる意義が分かっても、仕組みがないと1〜2か月で運用が消える。連携を続けるための型が4つある。

型①:来場当日、営業がその場で6項目を聞く運用を決める
6つのお客様情報は、後日アンケートで取ろうとすると回答率が落ち、記憶も薄れる。最も精度が高いのは、来場当日その場で営業担当が会話の流れで聞き取ることである。事前に「今回の来場で必ず聞く6項目」を営業チームで共有し、初回接客の1〜2時間の中で自然に会話に織り込む型を作る。「今日はどうやって当社をお知りになりましたか」から始めれば、①来場のきっかけから⑥エリアまで、無理なく順に聞ける。この型があるかないかで、集まる情報の質が別物になる。

型②:Google スプレッドシートのヒアリングシートに接客直後10分で入力する
営業担当が接客直後、記憶が鮮明なうちにGoogle スプレッドシートのヒアリングシートに入力する。項目は先の6項目に、営業担当のメモ欄を1つ加えたシンプルなもの。「後でまとめて入力」ではなく「接客直後の10分」を運用ルール化する。翌日以降にまとめて入力しようとすると入力率が急落し、内容も薄くなる。10分の即時入力を組織として徹底できる会社と、できない会社では、半年後の集客データの厚みが桁違いに変わる。

型③:週次営業会議への広報同席
週1回の営業会議に、広報担当が15分だけ同席する時間を作る。目的は3つ。今週来場した施主の傾向共有、営業から広告への要望聞き取り、次週の広告調整の方向合意。15分だけと決めておくと、広報も営業も負担が小さい。

型④:月次「お客様の声」振り返り会
月1回30分〜1時間、広報・営業マネージャー・経営者で、その月の来場者情報を横断的に見返す時間を持つ。個別の商談進捗ではなく、「今月来場者の共通点」「反響が良かったチャネル」「エリア別の反応差」「次月試す訴求」を議論する。この会議で決まったことが翌月のクリエイティブと訴求に反映される。

4つの型は、順番も大切である。①型で当日その場で聞き、②型でヒアリングシートに即時記録し、③型で週次に速報共有し、④型で月次に戦略反映する。この階層設計が、連携を続く運用に変える。

集めた情報を蓄積・活用するデジタル運用

情報を集めるだけでは活かせない。蓄積と分析の運用まで組み込む。SalesforceやHubSpotなどの高額SFAは要らない。Google スプレッドシート+AIツールの組み合わせで、住宅会社の規模なら十分に回る。

Google スプレッドシートで一元管理
1シートに、来場日・お施主様名(匿名可)・来場のきっかけ・当社を選んだ理由・SNSフォロー有無・現住エリア・希望建築エリア、を1行1組で蓄積する。営業のヒアリングシートを、このマスターシートに集約する。半年で100〜200組分が溜まる。

NotebookLMで横断分析
半年分のマスターシートをNotebookLMに投入し、「共通して出てくる来場のきっかけTop5」「なぜ当社を選んだ理由の共通点」「反応が良いエリアと悪いエリアの傾向」を聞く。100〜200組を横断した傾向が、数分で言語化される。担当者ひとりの記憶では見えない、月をまたぐ傾向が浮かび上がる。(住宅会社のNotebookLM活用10選についてはこちら)

Claudeで訴求軸抽出
NotebookLMで抽出した傾向を、Claudeに渡して「次のイベントLPの訴求軸案を5つ提案してほしい」「バナーコピー案を10個作ってほしい」と指示する。担当者の勘ではなく、来場者100〜200組のデータを根拠にした訴求案が返る。これを次のクリエイティブ制作の起点にする。(住宅会社のClaude活用方法についてはこちら)

この3ツールの組み合わせは、月額3,000〜5,000円で回る。年間で40万円以下。SFA導入と比べれば桁違いに安い現実解である。

経営者が果たすべき役割。連携は仕組みだけでは動かない

連携の仕組みを作っても、経営者の関与がないと3か月で形骸化する。仕組みは道具にすぎず、それを動かすのは組織文化。文化を作るのは経営者の仕事である。

部門間の壁を経営者が壊す
「広報と営業は連携すべし」と経営者が明言し、両者の会議に定期的に顔を出す。営業から広報への情報流通が滞っている時、経営者が「なぜ流れていないか」を直接聞きに行く。ここを現場任せにすると、両者の忙しさの前に連携は後回しになる。

週次営業会議に経営者が同席する意味
週次会議に経営者が15分同席することで、営業も広報も「この会議の結論は経営に届く」と分かる。決めたことが実行されやすくなり、会議の質が上がる。同席は月2回でも効果が出る。

評価制度への組み込み
営業のヒアリング入力率、広報のヒアリング活用実績を、評価項目に加える。「入力しなくても営業成績が良ければ評価される」状態だと、営業は入力を後回しにする。評価に組み込むことで、連携が組織の運用として定着する。

経営者が「仕組みは作った、あとは現場でやって」と離れると、連携は必ず消える。仕組みと文化の両輪で、初めて連携は続く。

広報と営業の連携は、集客と契約の両方を伸ばす

住宅会社のマーケ改善は、広告運用の技術論の先に、営業から吸い上げる一次情報の活用が待っている。6つのお客様情報を営業が当日その場で取り、4つの仕組みで連携を回し、Google スプレッドシート+NotebookLM+Claudeで蓄積・分析する。ここまで動けば、次のクリエイティブと訴求は勘ではなく根拠で決まる。

最後に一段抽象化する。広報と営業の連携は、単に集客改善のための手段ではない。営業が持っている一次情報を、広報がクリエイティブに反映し、その広告で来場した施主をまた営業が接客する。この循環が回り始めると、集客の質と契約率の両方が同時に上がっていく。片方だけを追う会社は、いつまでも片手落ちのまま。

連携する会社が、伸びる。

AUTHOR- この記事の執筆者 -

代表取締役社長
手塚 恭庸
代表取締役社長
手塚 恭庸

住宅業界向けSaaSの立ち上げからIPOまでをCMOとして牽引。
営業・プロダクト・組織設計まで一貫して手がけ、1,000社超の住宅会社のDXと業績改善に貢献。
コロナ禍ではオンライン販売モデルの構築を支援し、デジタル集客・来場・成約までを仕組み化。
「考える力」だけでなく「やり抜く力」を強みに、机上の空論で終わらせない支援を信条とする。
現在はG-Forceの代表取締役社長として、クライアントにとって外部パートナーではなく、“事業の一員”として本気で成果にコミットするサービスを展開。

関連するナレッジ

Knowledge