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住宅会社のInstagramインサイト自動化入門|いいね数ではなくリーチと保存数を毎日スプレッドシートに貯める方法

2026.10.20 | ナレッジ SNS

施工事例やルームツアーを毎週投稿し、インサイトもときどき開いている。それでも社長から「先月はどの投稿が効いたのか」と聞かれると、答えに詰まる。住宅会社のInstagram運用では、こうした場面は珍しくない。原因は投稿の量でも質でもなく、比較できる形で数値が残っていないことにある。本記事では、Instagramインサイトを毎日自動でスプレッドシートに蓄積する仕組みと、そのデータで何を判断すべきかを解説する。

Instagramインサイトは「開いて眺める」だけでは比較に使えない

Instagramのインサイトは、投稿を1本ずつ開けば数値を確認できる。ただし、過去の投稿を横に並べて比べる作りにはなっていない。先月のリールと今月のカルーセルのどちらが保存されたのかを知るには、1本ずつ開いて数字をメモするしかない。

多くの担当者は、週に1回スクリーンショットを撮るか、手でExcelに転記してしのいでいる。しかしこの方法には見落としやすい落とし穴がある。投稿の数値は、公開後も伸び続けるのだ。

いいね数、保存数、リーチは、公開翌日で止まるわけではない。保存されやすい間取り解説や、発見タブで拡散したリールは、1〜2週間かけてじわじわ伸びる。公開2日目にスクリーンショットを撮った投稿と、20日目に撮った投稿を並べても、条件が違うので公平な比較にならない。記録したはずの数字が、いつの間にか古くなっているわけである。

住宅会社のマーケ担当は、広告運用、イベント準備、チラシ制作を兼任していることが多い。毎週の転記作業は後回しになりやすく、3週間空いた時点で記録は途切れる。必要なのは、投稿ごとの最新の数値が、同じ条件で1枚の表に並んでいる状態である。これを人の手で維持するのは現実的ではない。だから自動化する。

追うべきはいいね数ではない。リーチと保存数をKPIに置く理由

何を自動で貯めるかを決める前に、何を見るべきかを整理しておく。結論からいえば、住宅会社のInstagram運用で主軸に置くべき指標はリーチと保存数であり、いいね数ではない。

いいね数には、見込み客ではない反応が多く混ざる。住宅会社のアカウントは、同業の工務店、設計事務所、建材メーカー、デザイナーからフォローされやすい。いいねが多い投稿を分析しているつもりが、実際には同業者に受けた投稿を分析していた、ということが起きる。

リーチは、その投稿を見たユニークアカウントの数である。同じ人に何度表示されても1と数えるので、どれだけの人に届いたかを素直に表す。保存数は、住宅ならではの重要なシグナルになる。間取り、収納、造作家具の投稿を保存する人は、家づくりを具体的に検討している可能性が高い。「あとで見返したい」という行動は、いいねよりも検討意欲に近い。

また、地方の住宅会社はそもそも商圏が小さい。都心のアカウントとリーチの絶対数を比べても意味がない。見るべきは他社との差ではなく、自社アカウントの推移である。

集客道場でも、地方の工務店から「毎日投稿しているのに問い合わせにつながらない」という相談を受けたことがある。SNSを見てその日に見学会を予約する人はほとんどいない。そこで、KPIを予約数から会社名での検索数(指名検索)に切り替えるよう助言した。投稿のリーチや保存数は、その指名検索のさらに手前にある先行指標である。だからこそ、投稿単位で記録しておく価値がある。(指名検索を増やす発信の作り方についてはこちら)

投稿ごとに蓄積する14項目と、エンゲージメント率の計算式

G-Boostで構築した仕組みでは、投稿1本につき1行として、次の14項目をスプレッドシートに蓄積している。

  • 投稿の基本情報:投稿日、投稿ID、投稿タイプ(画像・動画・カルーセル・リール)、投稿URL、キャプションの先頭60文字
  • 反応の数値:いいね数、コメント数、保存数、リーチ、シェア数、再生数
  • 分析用に追加した項目:エンゲージメント数、エンゲージメント率
  • 記録の時点:取得日時(この行の数値をいつ更新したか)

キャプションを全文ではなく先頭60文字だけにしているのは、表を見たときに「どの投稿か」が分かれば十分だからである。全文を入れるとセルが縦に伸び、一覧性が落ちる。

エンゲージメント数は、いいね、コメント、保存の合計とした。エンゲージメント率は、それをリーチで割った値である。たとえばリーチ2,000の投稿で、いいね・コメント・保存の合計が60なら、エンゲージメント率は3%になる。分母をフォロワー数ではなくリーチにしたのは、実際に見た人のうち何割が反応したかを知りたいからだ。フォロワー外に大きく広がった投稿も、公平に評価できる。

注意したいのは、投稿タイプによって取得できる指標が違う点である。静止画には再生数がない。シェア数は、主にリールなど一部の投稿タイプでしか取得できない。取得できない指標はエラーにせず、空欄のまま保持する設計にしている。空欄をゼロで埋めると、平均を出したときに数値が不当に下がるためだ。

毎日0時に「新規は追加、既存は上書き」。自動化の仕組みを専門用語なしで説明する

仕組みの部品は2つしかない。1つはGAS(Google Apps Script)で、Googleが無料で提供している「決まった時刻に処理を自動実行する機能」である。スプレッドシートと同じGoogleアカウントで動くので、サーバーを借りる必要はない。もう1つはInstagram Graph APIで、Instagramが外部のツールに数値を渡すための公式の窓口だ。

毎日の処理は、次の順番で進む。

  • 毎日午前0時〜1時の間にGASが自動で起動する
  • 直近30日以内に公開された投稿の一覧を、Instagramから受け取る
  • 投稿ごとに、いいね・保存・リーチなどの最新の数値を受け取る
  • 投稿IDでシートを照合し、未登録の投稿なら新しい行として追加し、登録済みなら数値の列だけを最新値で上書きする
  • 実行結果を「実行ログ」シートに記録する

対象を直近30日に絞っているのには理由がある。投稿の伸びは、時間が経つほど鈍っていく。公開から1か月を過ぎた投稿を毎日取り直しても、数値はほとんど変わらない。対象を絞れば処理が軽くなり、止まりにくくもなる。30日という期間は、運用を始めてから自社の投稿の伸び方を見て調整すればよい。

実行ログには、実行日時、成否、対象期間、新規追加件数、更新件数、メッセージを残す。コードを開かなくても、ログを見れば昨夜きちんと動いたかが分かる。エラーが起きた場合は、その内容がメールで届く。自動化で一番怖いのは、止まったことに誰も気づかない状態である。

自動化が止まる原因の多くはトークンにある。60日期限と事前警告の設計

運用面で最も注意すべきなのは、アクセストークンの期限である。アクセストークンとは、GASがInstagramから数値を受け取るための合鍵のようなものだ。Instagramログイン方式のトークンは、有効期限が60日と決まっている。

期限が切れると、処理は止まる。エラーメールの通知を設定していなければ、数週間分のデータが欠けたまま気づかない、ということも起こりうる。毎日の自動蓄積で一番もったいない失敗だ。

そこで、メインの処理とは別に、トークンの残り日数を見張る処理を用意した。トークンを取得した日を記録しておき、毎週月曜の朝9時に残り日数を計算する。残りが7日以下になったら、担当者にメールで警告を送る。警告を受けたら、専用の更新手続きを1回実行するだけで、期限がさらに60日延びる。Meta広告のAPIで必要になる、App IDやシークレットを使った変換作業は不要だ。

ただし、更新したらトークンの取得日の記録も更新しておくこと。これを忘れると、残り日数の計算がずれ、警告が早すぎたり遅すぎたりする。

G-Boostで実際に構築した際も、つまずいたのはほとんどがトークン周りだった。

  • トークンの取得元の間違い:App IDやシークレットなど、別の値をトークンとして貼り付けていた
  • コピー漏れ:長いトークン文字列の一部が欠けていた
  • テスター未承認:対象のInstagramアカウントがアプリのテスターとして登録・承認されておらず、「開発者の役割が不十分です」と表示された
  • トリガーの二重設定:同じ処理が1日に複数回走った

いずれも、原因が分かれば数分で直る。最初の構築でこれらを知っているかどうかで、立ち上げにかかる時間は大きく変わる。

蓄積したデータで見えるもの。投稿タイプ別の差と「伸びる投稿」の共通点

表が貯まり始めたら、スプレッドシートのピボットテーブルやQUERY関数で集計する。最初に見るべきは、投稿タイプ別の平均値である。リール、カルーセル、単枚画像それぞれのリーチ平均と保存数平均を並べると、自社のフォロワーに何が届き、何が保存されているかがはっきりする。リールはリーチが伸びるが保存されにくく、カルーセルの間取り解説はリーチ控えめでも保存が多い、といった傾向が、自社のデータとして見えてくる。

次に、リーチの推移を4〜8週間分たどる。直近2〜3週間の平均が以前の水準から明らかに落ちていれば、見直しのタイミングである。リーチ上位と下位の投稿をキャプション抜粋で並べると、共通点が見えやすい。住宅会社のアカウントは白基調・明朝体の落ち着いたデザインに寄りがちで、他社と見分けがつかなくなっていることがある。その場合は、デザインの方向転換、キャッチコピーの変更、投稿時間を20時以降にずらす、といった手を打つ。(住宅会社のインスタ投稿で意識するべきことについてはこちら)

社内への説明材料としても使える。集客道場では、Meta広告で見学会の予約広告と並行して、Instagramアカウントへ誘導する認知目的の広告を出していた会社がある。その会社には、アカウントへのアクセス数やフォロワー数を定期的に記録し、その数値を見て広告を調整するよう助言した。投稿の数値が日次で残っていれば、「広告を強めた週に、どの投稿のリーチが伸びたか」を示せる。月次の指名検索数や、来場アンケートの「Instagramを見て」の回答と並べれば、SNSが来場の手前でどう効いているかを説明できる。(住宅会社のインスタ認知広告の効果と測り方についてはこちら)

一方で、この仕組みは投稿単位のデータに特化している。フォロワーの居住地域の内訳や、アカウント全体のフォロワー推移は対象外である。商圏内にどれだけ届いているかは、引き続きアプリのインサイトで月1回確認する必要がある。

自社で構築するか、外部に任せるか。判断基準と最初の一歩

この仕組みは、GASのファイル1本で動く。規模としては小さい。それでも、自社で作るか外部に任せるかは、技術力よりも運用体制で決めるべきである。判断の分かれ目は3つある。

  • 社内に、エラーメールを見て原因を切り分けられる人がいるか:前述のエラーは定型的だが、初見では戸惑う
  • 60日ごとのトークン更新を、誰が担当するか決められるか:担当者が曖昧なままだと、警告メールは読まれずに埋もれる
  • 対象アカウントは1つか:今回の仕組みは1アカウント前提である。複数店舗・複数ブランドで運用する場合は、拡張の設計が別途必要になる

自社で構築する場合は、着手前に次の点を確認しておくと手戻りが減る。トークンは、Meta for Developersの「InstagramログインによるAPI設定」画面にある「トークンを生成」から取得する。対象アカウントは、事前にテスターとして登録し、Instagram側で招待を承認しておく。完成したら、まず当日のデータで手動実行し、シートとログに書き込まれるかを確かめる。自動実行のトリガーは、1つの処理につき1つだけにする。

もう1つ、注意点がある。今回の仕組みは、APIのバージョンv19.0で構築・動作確認したものだ。Instagram Graph APIは改定が続いており、指標の名称や取得できる項目が変わることがある。これから新しく作る場合は、必ず現行の仕様を確認してほしい。

最初の一歩は、コードを書くことではない。どの指標を、何のために見るかを決めることだ。リーチと保存数を主軸にすると決め、まず直近30日分の投稿を一度だけ手で表にしてみる。それだけで、自動化して毎日貯めたい数字がどれなのかが見えてくる。

数字が残る運用だけが、次の一手を教えてくれる

住宅会社のInstagram運用で成果が見えにくいのは、投稿の出来が悪いからとは限らない。公開後も伸び続ける数値を、同じ条件で比べられる形で残していないことが大きい。いいね数ではなくリーチと保存数を主軸に置き、直近30日の投稿を毎日上書きしながら貯めていく。運用で止まる原因のほとんどはトークンなので、60日期限の手前で警告が届く設計にしておく。

投稿を作る力と、投稿を振り返る力は別物だ。前者は担当者の努力で伸びるが、後者は仕組みがなければ続かない。毎日の数値が黙って積み上がっていく表こそ、少人数で回す住宅会社のSNS運用を支える土台。

AUTHOR- この記事の執筆者 -

代表取締役社長
手塚 恭庸
代表取締役社長
手塚 恭庸

住宅業界向けSaaSの立ち上げからIPOまでをCMOとして牽引。
営業・プロダクト・組織設計まで一貫して手がけ、1,000社超の住宅会社のDXと業績改善に貢献。
コロナ禍ではオンライン販売モデルの構築を支援し、デジタル集客・来場・成約までを仕組み化。
「考える力」だけでなく「やり抜く力」を強みに、机上の空論で終わらせない支援を信条とする。
現在はG-Forceの代表取締役社長として、クライアントにとって外部パートナーではなく、“事業の一員”として本気で成果にコミットするサービスを展開。

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