マーケティングの『壁』を超えるために――水元工務店の挑戦

2025.04.18 | インタビュー

「SNSの投稿に反応がない」

「チラシを配っても、来場ゼロだった…」

住宅会社の現場では、そんな“声にならないため息”が、日常のように漂っています。

今回ご紹介するのは、福井県にある水元工務店。かつては「マーケティングって必要なんですか?」という状態からスタートし、今では“数字を読み、仕組みで動く”会社へと変貌を遂げました。

変わるきっかけになったのは、マーケティング支援会社との取り組み。そして、その変化の裏には、「担当者を育てる文化」と「継続できるチームづくり」の工夫がありました。

今回は、代表の水元さん、広報担当の宮崎さんと、現場に深く入り込んで支援を続けてきた手塚さんとのリアルな対話から、住宅会社が「続くマーケティング」を実現するためのヒントを探ります。

マーケティングが“自分ごと”になった瞬間

手塚: 水元さん、最初にご一緒した頃は、マーケティングにどんな印象を持っていましたか?

水元さん: いやもう、「よく分からないけど、やった方がいいんだろうな」って感じでしたね(笑)。当時は支援会社さんと月1回Zoomで話すだけで、「これ、意味あるのかな?」と、どこか受け身でした。

でも手塚さんと始めてからは、毎週ミーティングで“逃げ場がない”。数字も見なきゃいけないし、「次どう動く?」って毎回聞かれるんですよ。最初は正直、きつかったですね。

でも、そのしんどさの中にこそ学びがありました。単に方法を教えるだけでなく、思考のクセまで変えてもらった。手塚さんの支援がなければ、ここまで腹落ちすることはなかったと思います。

手塚: それでも続けられたのは、なぜだったんでしょう?

水元さん: やっぱり、だんだんと“考えるクセ”がついてきたんです。気づいたら「マーケティングって、結局は人を知ることなんだな」って腑に落ちていて。いつの間にか、やらされてる感じじゃなく、“自分ごと”になってたんですよ。

チラシもイベントも「配る」から「動かす」へ

手塚: 具体的に、どんなところに変化を感じましたか?

水元さん: 一番は完成見学会の広告です。それまでは「イベントがあるから出す」って感じで、戦略も何も考えてなかった。でも今は、「誰に届ける?」「どんな言葉なら響く?」から考え始めます。

これは、手塚さんが最初に「そのチラシ、誰に届けたいんですか?」って聞いてきたのがきっかけでした。今まで意識してなかった視点を毎回問われることで、広告の本質が見えるようになっていったんです。

手塚: チラシの目的そのものが変わったんですね。

水元さん: そうなんです。「配ること」が目的じゃなくて、「動いてもらうこと」が目的だって、やっと分かったんですよ。

以前は“枚数”にこだわってましたけど、今は「この導線で、こう動いてほしい」と意図をもって作っています。ホームページにどう誘導するか、反響をどう見て次に活かすか――戦略の粒度が全然違いますね。

手塚: 水元さんの中で、“数字の見方”も変わってきたと聞きました。

水元さん: めちゃくちゃ変わりました(笑)。前はSNSのフォロワー数だけ見て、「増えた、やった!」みたいな感じだったんですけど、今は「なぜ増えた?誰が増えた?そこに意図はあったか?」まで考えるようになって。

これも手塚さんが「数字の裏にいる“人”を見ましょう」って、何度も繰り返してくれたから。自分の中の“見方”がガラッと変わったのを実感しています。

「誰に・何を・どのタイミングで」—看板にも戦略を

手塚: そういえば、「愛妻家がつくる家」の看板もだいぶ効いてきましてね。

水元さん: はい、実は当社としては、当初あまり看板には前向きではなかったんです。正直、「今どき野立て看板ってどうなの?」という思いもありましたし、費用対効果が見えにくいという懐疑的な見方をしていました。

でも、手塚さんが「看板にもちゃんと戦略を持てば武器になります」と言ってくれて。それで提案されたのが「愛妻家がつくる家」というコピーと、当社のコーポレートカラーだけで構成された看板でした。一般的な野立て看板だと住宅の写真を載せるのが主流ですが、これはまったく異なるアプローチで、当社のコンセプトを前面に打ち出したものでした。「こんなキャッチーなコピー、大丈夫かな…?」という不安とともに、これまでの方針を覆すようなデザインに、正直かなり迷いもありました。

でも、設置してみたら思った以上に反響があって。

手塚: 「看板を見て来ました」ってお客様、実際に増えましたよね。

水元さん: そうなんです。福井駅周辺や国道沿いに設置したんですが、「この道を通る人に届けたい」という想定通りの層にちゃんと届いた実感がありました。

これも、看板ひとつにしても「誰に・何を・どう伝えるか」を細かく一緒に詰めてくれたからこそ。手塚さんと一緒に戦略を描いたことで、現場の実感と広告の設計が結びついたんです。

手塚: 他の広告媒体にも応用できそうな視点ですね。

水元さん: はい。チラシもポスターも、ただ作るだけじゃなくて、「どう伝わるか」を考えるようになったことで、全部のクオリティが底上げされた気がします。

広報未経験から“成果を出す広報”へ

手塚: ここからは宮崎さんにもお聞きします。最初、広報を担当すると聞いたときはどう感じましたか?

宮崎さん: 正直、プレッシャーしかなかったです(笑)。でも水元社長が「まずやってみよう」と言ってくれて、最初は本当に試行錯誤でした。

手塚: 今はかなり安定感ありますよね。どんな工夫を?

宮崎さん: 最初は「どう見せたいか」を考えるのに時間がかかってました。でも、だんだん「誰に届けたいか」を先に考えるようになってから、言葉や構成がすんなり出るようになってきて。あとは、定例ミーティングで一緒に振り返る時間があるのも大きいですね。

水元さん: 最初の頃のチラシは“形はいびつでも、意志がある”って感じで、今見ると味があります(笑)。でも、そこが出発点だったからこそ、ちゃんと育ったんだと思います。これも手塚さんが根気強く並走してくれたから、安心して任せられたんです。

続けられる組織に必要な“空気”と“土台”

手塚: 水元工務店さんのように「継続的に成果を出す」ために、何が一番大事だと思いますか?

水元さん: まず、「担当者が辞めないこと」。これに尽きます(笑)。でもそれって、本人の気合いじゃなくて、「迷わず動ける仕組み」と「信頼できる伴走者」があるかどうかなんですよね。

宮崎が続けられているのも、仕組みと関わり方が整っているから。任せっぱなしにしないけど、手も出しすぎない。そのバランスを意識してます。

宮崎さん: 振り返ると、最初に「とにかく一度自分でやってみる」っていう空気があったのが大きかったです。完璧じゃなくていいから、まず動く。すると振り返れるし、次がある。

手塚: “走りながら考える”って、まさにそういうことですよね。

水元さん: そう。マーケティングに正解はないし、だからこそ続けることに意味がある。大事なのは、「人が辞めない」「改善し続ける」「みんなで振り返る」——これを自然に回せる組織の“空気”をつくることだと思います。

手塚: 最後に、この記事を読んでいる住宅会社の皆さんに一言お願いします。

水元さん: もし「うちには無理かも」と思っている方がいたら…うちも最初はそうでした。でも、小さくてもまずは“やってみる”。そして、信頼できる伴走者がいれば、必ず道は開けます。

AUTHOR- この記事の執筆者 -

代表取締役社長
手塚 恭庸
代表取締役社長
手塚 恭庸

住宅業界向けSaaSの立ち上げからIPOまでをCMOとして牽引。
営業・プロダクト・組織設計まで一貫して手がけ、1,000社超の住宅会社のDXと業績改善に貢献。
コロナ禍ではオンライン販売モデルの構築を支援し、デジタル集客・来場・成約までを仕組み化。
「考える力」だけでなく「やり抜く力」を強みに、机上の空論で終わらせない支援を信条とする。
現在はG-Forceの代表取締役社長として、クライアントにとって外部パートナーではなく、“事業の一員”として本気で成果にコミットするサービスを展開。

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