×

来場まであと一歩で去った人を追う。住宅会社のためのリターゲティング広告の始め方

2026.06.26 | ナレッジ

広告からイベントページに人は来ている。クリックも取れている。ところが、その多くは予約せずに去っていく。住宅会社のマーケ担当は、この「来たのに帰った人」を、たいてい一度きりの訪問者として手放してしまう。新しい人を連れてくることにばかり予算を割き、せっかく一度関心を持ってくれた人を、そのまま見送っている。

本当にもったいないのは、この「あと一歩で去った人」を追わないことだ。一度サイトに来たということは、少なくとも一度は興味を持ったということである。その人をもう一度連れ戻すための広告が、リターゲティングだ。本記事では、住宅会社がリターゲティング広告をどう始め、通常の配信とどう使い分け、どこで使うべきかを、具体的に解きほぐしていく。新規を増やす話ではない。取りこぼしを拾う話である。

リターゲティングとは何か。新規配信との違いを押さえる

まず、リターゲティングが何なのかを正しく押さえておきたい。リターゲティング(略してリタゲ)とは、一度自社のサイトやイベントページを訪れた人に対して、もう一度広告を表示する配信手法のことだ。一度来た人を「覚えておき」、その人を追いかけて広告を見せる。

新規配信は「間口を広げる」役割、リタゲは「縁のあった人を逃さない」役割だ。新規配信は、まだ自社を知らない人に向けて広く網を投げる配信で、リーチを広げ、新しい検討者との接点を作るのが役割である。一方リタゲは、すでに一度接点を持った人だけに絞って配信する。相手は、自社のページを見たことがある人。ゼロから興味を持ってもらう必要のない、検討の入口を一度くぐった人たちである。

この二つは対立するものではなく、役割の違う二本柱である。まずはこの位置づけを理解することが、リタゲ活用の出発点になる。

なぜ追うのか。住宅検討は一度では決まらないから効く

リターゲティングがなぜ効くのか。その根拠は、住宅という商材の検討の長さにある。家は、広告を一度見て、ページを一度見て、その場で予約するような買い物ではない。

検討者は、何度も情報に触れながら、少しずつ気持ちを固めていく。最初にページを見たときは「ちょっと気になる」程度で、まだ予約までは踏み切れない。去る理由はさまざまだが、その多くは「興味がない」からではなく「今このタイミングではない」からだ。一度去った人の中には、もう少し背中を押されれば動く人が、確実にいる。

リタゲは、まさにこの「今ではないが、いずれ動く人」に効く。一度ページを見て去った人に、後日もう一度広告を見せる。「またこの会社だ」という接触が積み重なり、検討の温度が上がったタイミングで「そういえば気になっていた」と予約に動く。検討期間が長い住宅だからこそ、リタゲは取りこぼしを拾う有効な手段になる。

始め方の基本。サイト訪問者を捕まえる仕組みと最初の設定

では、実際にどう始めるのか。リターゲティングの第一歩は、サイトに来た人を「捕まえる」仕組みを用意することだ。これがなければ、誰を追えばいいのかが分からない。

具体的には、自社のサイトやイベントページに計測用のタグを設置する。Meta広告であれば、専用のタグをページに埋め込むことで、訪問した人の情報を蓄積していける。この蓄積があって初めて、「このページに来た人」というリストが作られ、その人たちに向けて広告を配信できるようになる。タグの設置は一度やってしまえば、あとは訪問者が自動的にたまっていく。

設定の段階で考えておきたいのが、「誰を追うか」だ。サイトに来た人すべてを対象にするのか、特定のイベントページを見た人に絞るのか。最初は難しく考えず、まず「ページを訪れて予約しなかった人」を対象に始めるのが分かりやすい。仕組みを整え、対象を決め、配信を始める。この基本の流れを押さえれば、リタゲは動き出す。

通常配信とリタゲは分けて管理する。URLを分けてヒートマップに登録する

リターゲティングを始めるときに、必ず守りたい運用の原則がある。通常の新規配信とリタゲを、分けて管理することだ。一緒くたにすると、どちらがどれだけ成果を出しているのかが分からなくなる。

新規でいくらかけて何件取れたか、リタゲでいくらかけて何件取れたか。分けて見るからこそ、どちらにどれだけ予算を寄せるべきかを判断できる。運用上の具体的な工夫として、遷移先のURLを分けておく方法がある。新規配信とリタゲで、同じイベントページでも別のURLを使い、それぞれをヒートマップに別々に登録する。こうすれば、新規で来た人とリタゲで戻ってきた人が、ページ上でどう違う動きをするかまで見える。

配信を分け、URLを分け、データを分ける。この管理の分離が、リタゲの効果を正しく測る前提になる。

短期イベントで使うべきか。配信期間とのバランスで判断する

リターゲティングは万能ではない。とくに、開催までの期間が短いイベントでは、使うべきかどうかを慎重に判断したい。配信期間とのバランスが、リタゲの成否を分ける。

リタゲは、一度来た人がたまって初めて配信できる。開催まであと数日しかないような短期のイベントだと、訪問者がたまる前に当日が来てしまう。残り期間が一週間を切っているようなケースでは、リタゲに労力を割くより、通常配信で新規の予約を取りに行くほうが現実的なこともある。

逆に、配信期間を長めに取れるイベントであれば、リタゲは力を発揮する。早めに新規配信を始めて訪問者をため、後半でその人たちにリタゲをかける。短期決戦なら新規優先、期間に余裕があるならリタゲを重ねる。配信期間という土台の上で、リタゲの使いどころを見極める。

追いすぎない設計。フリークエンシーと「しつこさ」の境界

最後に、リターゲティングで最も気をつけたい落とし穴を挙げておく。追いすぎることだ。一度来た人を追えるからといって、同じ人に何度も執拗に広告を見せると、効果はかえって逆に振れる。

ここで関わるのが、フリークエンシー、つまり同じ人に広告が表示される回数だ。適度な接触は「またこの会社だ」という好意的な認知につながるが、度を越すと「またこの広告か」という不快感に変わる。せっかく一度関心を持ってくれた人を、しつこさで遠ざけてしまっては本末転倒だ。

だからこそ、表示回数の上限を設けたり、配信する期間を区切ったりして、追いすぎない設計をする。背中をそっと押すのと、しつこく付きまとうのは違う。この境界を意識した設計が、リタゲを「嫌われずに戻ってきてもらう」広告にする。

まとめ

リターゲティングは、新規を増やすための広告ではない。一度来て、予約せずに去った「あと一歩の客」を拾うための広告である。住宅検討は一度では決まらないからこそ、二度目、三度目の接触が効く。始めるにはまず訪問者を捕まえる仕組みを整え、通常配信とは分けて管理し、URLを分けてデータを見る。短期イベントでは使いどころを見極め、そして何より、追いすぎない設計で「しつこさ」の境界を越えない。

新規配信で間口を作り、リタゲで戻ってくる人を拾う。この二本柱が揃って初めて、広告は来た人を取りこぼさなくなる。去った人を、そのまま手放さない。それが、予約を一件でも多く拾う住宅会社のリターゲティング設計である。

AUTHOR- この記事の執筆者 -

代表取締役社長
手塚 恭庸
代表取締役社長
手塚 恭庸

住宅業界向けSaaSの立ち上げからIPOまでをCMOとして牽引。
営業・プロダクト・組織設計まで一貫して手がけ、1,000社超の住宅会社のDXと業績改善に貢献。
コロナ禍ではオンライン販売モデルの構築を支援し、デジタル集客・来場・成約までを仕組み化。
「考える力」だけでなく「やり抜く力」を強みに、机上の空論で終わらせない支援を信条とする。
現在はG-Forceの代表取締役社長として、クライアントにとって外部パートナーではなく、“事業の一員”として本気で成果にコミットするサービスを展開。

関連するナレッジ

Knowledge