「他社の成功事例を教えてください!」
「A社が○○施策で成功したらしいから、ウチでもやってみよう」
住宅会社の現場では、よくこんな言葉が飛び交います。
しかし、そのまま真似してもうまくいかないということをご存じでしょうか?
成果が出ている他社の事例を知ることは、自社の集客や販促のヒントになりますし、具体的な施策が見えることで取り組みやすさも感じられますから、たしかに知りたくなるでしょう。
ただ、そこにある“見えない前提条件の違い”を見落としてしまうと、自社の成果につなげることはできないのです。
この記事では、他社の成功事例をどう扱うべきか、そして自社に落とし込むために必要な「考える力」について解説します。
他社の成功施策を見て、「よし、うちもやってみよう」と思うのは自然なことです。たとえば「ある会社が配信したメールで資料請求が急増した」という話を聞けば、そのメール文面を見せてもらいたくなるでしょう。
しかし、いざ同じような内容でメールを送ってみても、なかなか成果が出ないことがあります。
その理由は、施策の背景にある「誰に向けたのか」「なぜその内容にしたのか」という“文脈”が異なるからです。
成功事例には、必ず「誰に(ターゲット)」、「何を(メッセージ)」、「なぜ(意図)」という要素がセットで存在します。
そこを読み解かず、ハウツーだけを模倣してしまうと、自社とは合わない形で再現しようとしてしまい、結果が伴わないのです。
では、他社の事例は参考にならないのでしょうか?
違います。参考にすべき点を正しく認識すれば良いのです。
うまくいっていない会社ほど、成功事例の「方法」ばかりを知りたがります。「どうやってやったのか」「どんなツールを使ったのか」といった表面的な部分です。
もちろん、それも参考にはなりますが、本当に大事なのは「なぜそのやり方が機能したのか?」という“考え方”の部分です。
たとえば、そのメールがなぜ刺さったのかを考える際には…、
・「どんなユーザーに向けて書かれていたのか?」
・「そのターゲットは、どんな状況や価値観を持っていたのか?」
・「どの言葉や表現が、なぜ心に響いたのか?」
といった問いを立てて分解していくことが必要です。
そうして得た“エッセンス”こそが、自社で再現可能な知見になります。
特に注意したいのが、地域や商圏、取り扱っている商品が異なるケースです。
わかりやすいように、極端な例を挙げてみましょう。
東京の分譲住宅会社で成功した事例を、そのまま地方の注文住宅会社が取り入れてもうまくいくとは限りません。それは感覚でわかりますよね。
顧客層も意思決定のプロセスも違えば、同じ手法でも響き方がまったく異なるからです。
成功事例を参考にする際には、「自社との共通点」と「異なる前提条件」を明確にし、その上で“応用可能な部分”を見極めていく視点が求められます。
では、どうすれば成功事例を自社の成果につなげることができるのでしょうか。
ポイントは次の3つです。
1.背景を読み取る:
事例が成功した“文脈”を深掘りする。「誰に対して、どんな課題解決として機能したのか?」を理解しましょう。
2.要素に分解する:
文章・構成・トーン・訴求軸など、成果に寄与していそうなポイントを要素ごとに分け、自社に転用できるかを見極めます。
3.自社の状況と照らす:
ターゲットや地域性、商品特性と照らし合わせて、「この表現は自社の顧客にも刺さるか?」と検証・調整を加えて使います。
このプロセスを経ることで、ただの“模倣”が、自社にフィットした“戦略”へと変わっていきます。
他社の成功事例は、あくまでヒントであり、答えそのものではありません。
うまくいった方法をそのままコピーするだけでは、再現性のある成果は期待できず、むしろ見えない前提条件の違いによって、成果が出ずに徒労感だけが残ってしまうリスクもあります。
だからこそ重要なのは、「なぜうまくいったのか?」を読み解く視点を持つことです。
成功の“背景”を分析し、自社のターゲットや状況に合わせて再構築することで、初めて“使える事例”になるのです。
成功事例を鵜呑みにするのではなく、ヒントとして捉え、自分の頭で考え、自社らしい答えに変えていく──その姿勢こそが、成果を生み出し続ける力になります。