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ポスティングの配布エリアは「土地勘」で決めない|集合住宅を地図にピン留めして住み替え層に届ける方法

2026.10.28 | ナレッジ

見学会のチラシを手巻きで配っている。配布エリアは社長の土地勘や、昔から配っている町内で決めている。「賃貸の多いエリアを狙え」と言われても、どこにアパートやマンションがあるのかは一覧になっていない。工務店のポスティングで、よく見かける光景である。本記事では、配布エリア内の集合住宅を自動でリスト化し、地図にピン留めして配布に使う方法と、その限界を解説する。

配布エリアを土地勘で決めると、賃貸住み替え層を取りこぼす

ポスティングの反響は、チラシのデザイン以上に、どこに配るかで決まる。

G-Boostのノウハウでは、自社スタッフやスポットワーカーが手で配る「手巻き」の反響率は0.1〜0.3%、ポスティング業者に任せた場合は0.01〜0.03%を目安としている。1万枚を配ったときの反響は、手巻きなら10〜30件、業者なら1〜3件になる計算だ。この差を生む大きな理由は、手巻きなら配る場所とタイミングを自社でコントロールできることにある。裏を返せば、配布エリアの選び方が雑なら、手巻きの強みは半分しか生きない。

ところが現場では、配布エリアの決め方が属人的なままになっていることが多い。社長が昔から知っている町内、営業担当が通勤で通る道沿い、前回も配ったから今回も、という具合である。土地勘は大切だが、それだけで決めると、担当者が知らないエリアは最初から候補に上がらない。新しく建ったアパート群や、幹線道路の裏手に並ぶ中規模マンションは、見落とされやすい。

もう1つの問題は、配布スタッフに渡す地図がないことだ。スポットワークで集めたスタッフに「この辺りのアパートを中心に」と口頭で伝えても、どの建物が対象なのかは伝わらない。結果として、配りやすい戸建て街だけを回って終わる、ということが起きる。

必要なのは、配布候補の集合住宅が一覧になり、地図の上で位置が分かり、配ったかどうかを記録できる状態である。

賃貸の集合住宅を狙うべき理由と、狙ってはいけない場面

なぜ集合住宅をリスト化するのか。新築の見学会に関しては、賃貸住まいの世帯こそ、最も検討のきっかけが生まれやすい層だからである。

賃貸住まいの世帯は、更新のタイミング、子どもの入園・入学、家族が増えて手狭になったときなどに、「そろそろ家を買うべきか」と考え始める。住宅の購入検討者は、今の住まいから大きく離れた場所を選びにくい。今の生活圏で建てたい、子どもの校区を変えたくない、という世帯は多い。会場から半径1〜3kmをメインエリアとして面で配る、というノウハウ集の基本設計は、この行動特性に沿ったものである。

ただし、集合住宅ならどこでもよいわけではない。優先すべきは2LDK以上のファミリー向け物件で、単身者向けの1Kばかりのアパートに新築見学会のチラシを入れても反応は薄い。築年数が浅いマンションは、そもそも分譲で、すでに持ち家の世帯が住んでいる場合もある。

もう1つ、明確に避けるべき組み合わせがある。リフォームのチラシを賃貸の集合住宅に配ることだ。リフォームを決めるのは建物の所有者であり、入居者ではない。集客道場でも、リフォームのチラシを数百枚配って反響が0件だった相談に対し、チラシの中身より先に、配布エリアとターゲットが合っているかを確認するよう助言している。

集合住宅のリストは、新築や住み替えを訴求するチラシのための道具である。何を配るかによって、使うべきリストは変わる。

Googleの場所データから、集合住宅を自動でリスト化する仕組み

G-Boostで構築した仕組みは、次の4つの道具を組み合わせている。

  • Googleスプレッドシート:検索条件と、見つかった建物のデータを保存する
  • GAS(Google Apps Script):Googleが無料で提供する自動処理の機能。検索を実行する
  • Google Places API:Googleマップに登録された建物や施設を、外部のツールから検索するための公式の窓口
  • Googleマイマップ:リストを地図にピンで表示する無料のツール

使い方はシンプルだ。まず、配布エリアの中心になる住所と、検索する半径を決める。既定の設定は半径500mで、中心には見学会の会場や、狙いたいエリアの代表的な施設を置く。たとえば、ある市役所を中心に半径500mと設定するイメージである。

次にGASを実行すると、Googleマップのデータから「マンション」「アパート」「コーポ」「ハイツ」の4つのキーワードで、半径内の建物を検索する。キーワードを4つに分けているのは、集合住宅の名前の付け方が地域や年代でばらつくからだ。築年数が古い木造アパートには「コーポ」や「ハイツ」と名の付く物件が多く、「マンション」だけで検索すると取りこぼす。

見つかった建物は、スプレッドシートの候補リストに自動で書き込まれる。記録されるのは、建物名、住所、緯度・経度、中心からの距離、どのキーワードで見つかったか、Googleマップで開くためのリンクである。

中心からの距離が入っているのは、配る順番を決めるときに役立つからだ。会場に近い建物から優先して配り、枚数が余れば外側へ広げる、という判断が表の上でできる。

リストをGoogleマイマップにピン留めし、現場で使える地図にする

スプレッドシートのままでは、現場で建物の位置関係が分からない。そこで、Googleマイマップに取り込んで、地図の上にピンを立てる。

手順は次のとおりである。

  • Googleマイマップを開き、「新しい地図を作成」を選ぶ
  • 「インポート」から対象のスプレッドシートを選ぶ。候補リストのシートを1枚目に置いておくと、そのまま読み込まれる
  • 位置を示す列として「緯度」「経度」を選ぶ
  • ピンのタイトルに使う列として「建物名」を選ぶ
  • 地図のタイトルを対象エリア名に変えて保存する

まれに、意図しないシートが読み込まれたり、位置の列を正しく認識しなかったりすることがある。その場合は、スプレッドシートで候補リストのシートを開いた状態で、「ファイル」から「ダウンロード」、「カンマ区切り形式(.csv、現在のシート)」を選んで書き出す。マイマップのインポート画面で「コンピュータからアップロード」を選び、このCSVを読み込めば、あとの手順は同じである。

出来上がった地図は、使う人に合わせて3通りの形で渡せる。

パソコンのブラウザで開けば、左側に建物名が一覧で並び、クリックするとその建物のピンに移動する。配布ルートを事前に組むときに便利だ。スマートフォンのGoogleマップアプリでは、保存した地図を開くと同じように一覧が出るので、現地を歩きながら次の建物を探せる。スマートフォンを持たない配布スタッフには、「その他」メニューの「印刷」から、建物名と住所の一覧を紙で渡せばよい。シニアのスタッフが多い会社では、この紙の一覧が一番使われる。

戸数とオートロックは自動では取れない。現地で埋めて、配布ステータスで管理する

自動で集められるのは、建物名と位置までである。配布の判断に必要な情報のうち、戸数とオートロックの有無は、Googleのデータには含まれていない。ここは現地調査で埋めるしかない。

戸数は、集合ポストの数を数えれば分かる。ポストが8個ならチラシは8枚必要で、配布枚数の見積もりにそのまま使える。駐輪場に子ども乗せ自転車が並んでいるか、ベランダにファミリー向けの広さがあるか、といった様子も一緒に見ておくと、優先度を付けやすい。

オートロックの物件は、エントランスの内側に集合ポストがある場合、原則として配布対象から外す。住人の許可なく中に入ってまで配ることはしない。建物の外に集合ポストがある場合でも、「チラシお断り」の表示があれば配らない。こうした判断を配布スタッフ任せにすると、トラブルが起きてから気づくことになる。現地調査の段階で対象外と記録しておくのが安全である。

候補リストには、配布済み・未配布などを記録する「配布ステータス」の列がある。配布スタッフが帰ってきたら、どの建物に配り、どこが配れなかったかを更新する。これを続けると、次回の見学会では「前回配れなかった建物」から回る、といった判断ができるようになる。

さらに一歩進めるなら、エリアごとにQRコードや問い合わせ用の番号を分けておくとよい。どのエリアから反響が来たかが分かれば、反響が出ないとき、原因がエリアにあるのかチラシにあるのかを切り分けられる。

SUUMOなどから情報を集めない理由と、Googleのデータの限界

集合住宅の情報なら、不動産ポータルサイトの方が詳しいのではないか。そう考える人もいるだろう。確かに、ポータルには間取りや戸数まで載っている。しかし、この仕組みではポータルのデータを一切使っていない。

SUUMOやLIFULL HOME’Sなどの不動産ポータルは、利用規約で、商業目的でのデータの機械的な収集(スクレイピング)をはっきり禁止している。便利だからといって規約違反のデータで集客をするのは、住宅会社として取るべきリスクではない。

Google Places APIは、Googleが外部での利用を前提に公式に提供しているデータである。その代わり、限界もはっきりしている。

  • Googleマップに登録されていない小規模なアパートは、検出されないことがある
  • 戸数やオートロックの有無など、詳しい情報は含まれていない
  • 検索結果の正確さや網羅性は、Googleのデータ次第で保証されない

つまり、このリストは配布エリア内の集合住宅を100%拾うものではない。現地を歩くと、リストにない木造アパートが見つかることは珍しくない。そうした建物は、見つけた時点で候補リストに手で書き足していけばよい。

自動化の役目は、ゼロから地図を眺めて探す手間を省くことであり、現地確認を不要にすることではない。この点を担当者全員が理解していれば、リストの漏れが問題になることはない。

費用は無料枠に収まるか。3人の役割分担と、最初の一歩

費用は、ほとんどかからない。GAS、スプレッドシート、マイマップは無料で使える。費用が発生しうるのはPlaces APIの検索だけで、2026年7月時点では月5,000リクエストまで無料、それを超えると1,000リクエストあたり32米ドルである。料金体系は変わることがあるので、使う前に公式の最新情報を確認してほしい。

半径500m程度のエリア単位で使う分には、通常は無料枠に収まる。ただし、複数の会場の周辺をまとめて検索したり、半径を大きく広げたりすると、無料枠を超える可能性がある。対象エリアが多い場合は、事前に何回検索するかを試算しておくとよい。

運用上の注意は、検索に使う鍵(APIキー)の扱いである。APIキーはスプレッドシートには書かず、GASの「スクリプトプロパティ」という設定欄で管理する。さらに、このキーではPlaces API以外を使えないよう制限をかけておく。万一キーが漏れても、不正利用の被害を小さくできる。

運用は、次の3つの役割に分けると回りやすい。

  • 実行担当:GASを実行し、スプレッドシートと地図を管理する
  • 現地調査担当:戸数・オートロック・チラシお断り表示を確認し、リストに記入する
  • 配布担当:実際にチラシを配り、配布ステータスを更新する

小さな会社なら1人が兼ねてもよい。大事なのは、誰がどの列を更新するかを決めておくことである。

最初の一歩としては、次の見学会の会場を中心に、半径500mで一度だけ実行してみることを勧める。ここで気をつけたいのは、地図作りに凝りすぎないことだ。集客道場でも、ポスティングのマッピングにこだわりすぎると「まだ配れない理由」ばかりが並ぶため、まず現地で配ってから検証するよう助言している。リストは7割の精度で十分である。配りながら、現地で見つけた建物を足し、配れなかった建物に印を付けていけばよい。

配布リストは、現地で歩いた分だけ精度が上がる

ポスティングの反響を左右するのは、どこに配るかである。新築や住み替えのチラシなら、会場周辺のファミリー向け賃貸の集合住宅は、検討のきっかけが生まれやすい層が集まる場所だ。Googleのデータで候補を自動で洗い出し、マイマップに立てたピンを配布スタッフと共有する。戸数とオートロックは現地で埋め、配布ステータスで結果を記録していく。

土地勘を捨てる必要はない。土地勘が届かない場所を地図が補い、地図が拾えない建物を現地の足が補う。その往復を重ねた会社の配布リストは、見学会のたびに少しずつ確かな資産になっていく。手巻きの価値を最大化する、地味で確実な一手。

AUTHOR- この記事の執筆者 -

代表取締役社長
手塚 恭庸
代表取締役社長
手塚 恭庸

住宅業界向けSaaSの立ち上げからIPOまでをCMOとして牽引。
営業・プロダクト・組織設計まで一貫して手がけ、1,000社超の住宅会社のDXと業績改善に貢献。
コロナ禍ではオンライン販売モデルの構築を支援し、デジタル集客・来場・成約までを仕組み化。
「考える力」だけでなく「やり抜く力」を強みに、机上の空論で終わらせない支援を信条とする。
現在はG-Forceの代表取締役社長として、クライアントにとって外部パートナーではなく、“事業の一員”として本気で成果にコミットするサービスを展開。

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