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住宅会社のマーケ担当は「採る」のではなく「育てる」。未経験を集客できる広報に変える3つの原則

2026.09.18 | ナレッジ

「うちにも専任のマーケ担当を1人置きたい。だが、応募が来ない」。地方の中小住宅会社の経営者から、いま最も多く聞く相談のひとつである。年間棟数10〜30棟、社員10〜30名の会社で、これまでマーケ業務は営業アシスタント兼務か経営者本人が兼務してきた。しかしMeta広告・Instagram・LP・チラシ・LINE・お客様アンケートと、集客業務のチャネル数はここ数年で一気に増えた。もう兼務では回らない。

そこでIndeedやリクナビ、地元求人媒体に「マーケ担当募集」で求人を出す。ところが応募が来ない。ようやく来た応募者を面談すると、住宅業界の経験はあるがマーケ経験ゼロ、あるいはマーケ経験はあるが住宅は初めて。両方持っている人材は、地方にはほぼいない。都心には多少いるが、地方の給与レンジでは来てくれない。仮に採れても定着しない。

ここで多くの経営者が「もっと年収を上げるべきか、それとも未経験を採って育てるか」という二択で悩みが止まる。しかし、この二択の立て方そのものが問題である。マーケ担当の悩みの本丸は「採用」ではなく「育てる仕組み」にある。むしろ、経験者を採ろうとする発想自体が、住宅会社の集客力を長期的に弱くする。

本記事では、住宅会社のマーケ担当を社内で育てる具体的な原則、経営者自身が果たすべき役割、6か月〜1年で「集客できる広報」を1人立ち上げるロードマップまでを整理する。

なぜ住宅会社は「マーケ経験者」を採れないのか。構造的な3つの壁

まずは冷静に、経験者採用が難しい構造を認めるところから始めたい。地方の住宅会社が「マーケ経験者を採る」という選択肢を取り続けているかぎり、集客組織の立ち上げは永遠に前に進まない。

理由は3つある。第1に、住宅×マーケの両方の経験を持つ人材は、そもそも母集団が極端に小さい。デジタル広告・SNS・LPの実務を回せて、かつ住宅商談の文脈も分かる人は、都市部の広告代理店の住宅担当か、大手ハウスメーカーのマーケ部門にほぼ集中している。地方の商圏では、求人媒体を厚めに出しても、そこにたどり着く応募者はまず1〜2名しか出てこない。

第2に、仮に応募が来ても、年収レンジが合わない。マーケ経験者の相場は、地方であっても年収500〜650万円台からのスタートになる。地方中小住宅会社の給与テーブルはこれより一段低いことが多く、無理に合わせて採ると社内の営業担当の年収を追い抜く事態が起きる。組織の給与バランスが崩れる代償のほうが、マーケ担当1人分のコストより大きい。

第3に、来ても定着しない。中途で入ったマーケ経験者は、前職の型を持ち込みたがる。地方中小の広告予算月10〜30万円、商圏半径15〜30km、来場CPA3〜5万円という現実感覚と、大手や代理店のスケール感の差に耐えられず、半年〜1年で辞めていく。

つまり、経験者採用は「採れない、来ても払えない、来ても定着しない」の三重苦である。この構造は、求人票を工夫しても媒体を変えても、根本は変わらない。だから前提を変える。

経験者を採らなくていい。未経験を育てれば自社に集客力が根付く

前提の転換は1つだけ。「経験者を採る」から「未経験を育てる」に切り替える。これは妥協案ではない。むしろ、地方の中小住宅会社が長期的に強くなるための最短ルートである。

住宅会社向けのマーケ支援を続けている、ある専門組織がある。会員となっている地方の中小住宅会社のほとんどは、専任マーケ担当を採る際に「未経験から育てて、自社で集客できる力をつける」というコンセプトで動いている。実際、そのやり方で成果が出ている。未経験入社1年目でMeta広告・イベントLP・Instagram・チラシ・LINEを一通り回し、来場予約数を月10件から月30件に伸ばした会社、月間の広告CPAを半分に落とした会社、と実例は積み上がっている。

なぜ未経験でも回せるようになるのか。理由はシンプルで、住宅会社の集客業務は「特殊な才能」ではなく「正しい方向で努力を積む」ことで、ほぼ全員がある水準まで到達できるタイプの仕事だからである。Meta広告の管理画面の触り方、LPの反響数字の読み方、Instagramのリール制作、チラシのレイアウト、お客様アンケートの分析、これらはすべて型化されている。型を教われる環境と、実行する時間と、フィードバックがあれば、未経験の担当者でも半年〜1年で確実に力がつく。

一方、経験者を採った場合の落とし穴は、この会社に馴染む前に「前職ではこうだった」を持ち込みがちなことである。住宅の商圏・予算・意思決定スピードは業界固有のものが多く、他業種の型がそのまま通用しない。むしろゼロから自社の商圏・自社のお客様像・自社の商品で育った担当者のほうが、長期的に自社の集客の土台を作れる。

住宅会社の集客力は、経験者を1人採ることではなく、未経験を育てて自社に根付かせることで初めて資産になる。

未経験のマーケ担当は、素直さ・情報収集力・細かい作業への適性で採る

「未経験を育てる」と決めたら、次は誰を採るかの基準である。マーケ経験の有無を捨てた瞬間、面接で見るべき軸は変わる。以下の3つを、他のどんな条件よりも優先して見る。

  • ①言われたことを、まず素直にやってみるかどうか——マーケ業務は、最初の半年〜1年は「型通りにやってみる」の連続である。Meta広告の入稿設定、LPのFV改善、Instagramの投稿フォーマット、どれも先輩や外部支援者から「まずこの型でやってみて」と渡されるところからスタートする。ここで「なぜですか」「本当にそれで効果あるんですか」と入口で止まるタイプは伸びない。まず素直に一度やってみて、結果を見てから議論する人が、確実に育つ。
  • ②自分でいろいろ情報を調べられるかどうか——渡された型をこなす段階から、自走する段階に上がるには、社内に転がっていない情報を自分で調べる力が要る。YouTubeでMeta広告解説を検索する、住宅会社のInstagram事例を集める、業界メディアの新着を追う。指示待ちで止まる人と、自分で調べに行く人では、1年後の到達点が別物になる。面接で「最近、自分で調べて学んだことは何ですか」を必ず聞く。
  • ③細かい作業が好き、または苦にならないかどうか——広告の予算設定、バナー1枚のマイクロコピー、LPのボタン文言、Instagram投稿のハッシュタグ、ヒートマップの離脱率確認。マーケ業務の8割は、地味な細かい作業である。派手なアイデア出しや戦略立案は残りの2割で、しかも上の3項目が満たされてから初めて任せられる。細かい作業を「地味でつまらない」と感じる人は、この職種で長続きしない。

前職の職種で言えば、事務職、営業アシスタント、接客業(アパレル・カフェ・受付)の経験者は、この3条件を満たしやすい。年収レンジは未経験なら350〜400万円が現実的なライン。ここを起点に、育成の設計に入る。

広報業務を4領域に分解し、半年ごとに1領域ずつ渡す

未経験を採ったら、次に絶対にやってはいけないのが「マーケ担当なんだから、集客業務は全部よろしく」という丸投げである。これをやると、育つ前に潰れる。広報・マーケ業務は多岐にわたるため、業務を4領域に分解し、半年ごとに1領域ずつ渡していく段階設計が要る。

住宅会社の広報業務は、大きく次の4つに分けられる。

  • ①デザイン領域:広告バナー、チラシ、封筒、名刺、モデルハウスのPOPなど、視覚物の制作。CanvaやAdobe Expressで、既存テンプレートをベースに調整するところから始める
  • ②制作領域:LP、ブログ、SNS投稿、メルマガ、YouTube用の資料など、文字と構成の制作。他社事例のリサーチとテンプレート活用が起点
  • ③数字管理領域:GA4、Meta広告管理画面、Google広告、ヒートマップ、案件管理シートなど、数字を追う業務。まずは既存の週次レポートを転記するところから
  • ④営業連携領域:お客様アンケートの吸い上げ、営業担当からの現場情報のヒアリング、次回訴求軸への反映など、営業組織とマーケの橋渡し

失敗パターンは、これらを一気に全部渡すことである。「未経験なのにMeta広告設定もLP改修もInstagram投稿もアンケート分析も全部やらせる」を初日からやると、担当者は3か月で疲弊し、成果も出ないまま辞めていく。

正しい設計は段階的な権限委譲である。入社0〜3か月は①デザイン領域を中心に、既存テンプレートの調整や、指示された素材の作成に絞る。4〜6か月で②制作領域を加える。ここで初めてLPの部分改修やSNS投稿の下書きを任せる。7〜9か月で③数字管理領域を追加し、週次レポートの読み解きと簡単な改善提案までやってもらう。10〜12か月で④営業連携領域まで広げ、営業担当との定例に入ってお客様情報を吸い上げる役割を持つ。

一気に4領域を渡さず、半年〜1年かけて1領域ずつ拡張する。これが、未経験マーケ担当を「集客できる広報」に育てる業務分解の原則である。

経営者自身が集客を学ぶことが、最大の育成投資である

未経験マーケ担当を育てるうえで、最大の投資先は担当者本人ではない。経営者自身が集客を学ぶこと。ここに手をつけないと、担当者は絶対に育たない。

理由は構造的である。経営者が集客を分からないままだと、マーケ担当が上げてきた提案・数字・レポートに対して、判断ができない。「Meta広告のCPAが下がったのは良いのか悪いのか」「Instagramのフォロワー数と来場予約数、どちらを優先すべきか」「今月のLP改修は続けるべきか、別の施策に切り替えるべきか」。これらの判断が全部担当者に丸投げされる。未経験入社1年目の担当者が、たった1人でこの判断を背負い続けるのは無理である。

経営者が集客を学ぶことのリターンは、単に「判断ができるようになる」だけではない。優先順位付け、予算配分、社内の営業組織との調整、そしてマーケ担当への日々の1on1でのフィードバック。これら全部の質が一段上がる。逆に言えば、経営者が学ばないまま社内にマーケ組織を作ろうとするのは、算数を知らない人が学習塾を経営するようなものである。土台がないところで、担当者だけが浮いてしまう。

経営者が学ぶといっても、資格取得や大がかりな研修は要らない。目安は週30分でよい。住宅マーケの実務系YouTube動画を1本見る、他社の広告事例を10件見る、月1で外部の勉強会か壁打ちに出る、自社のGA4管理画面を毎週1回だけ開いてみる。この30分が半年積み上がれば、担当者の提案を評価できるレベルに立てる。

一段踏み込むなら、経営者が月1回、マーケ担当と一緒に「今月の集客レビュー会」を30分持つとよい。数字を一緒に見て、担当者の判断に対して「なぜそう考えたか」を聞く。答えるうちに担当者は自分の思考を言語化でき、経営者は現場の解像度を上げていく。両者が同じ集客の景色を共有した時、初めて社内マーケ組織は自走を始める。

未経験を採る覚悟をした経営者が、最初に着手すべき投資は自分自身の学習である。

6か月〜1年で「集客できる広報」を社内に作る育成ロードマップ

育成の時間軸は6か月〜1年、月別の段階は以下の通り。

  • 0〜1か月:インプット期間——入社直後は、いきなり作業に入れない。1か月間、住宅マーケの基礎(Meta広告・LP・Instagram・チラシ・ヒートマップの全体像)を、YouTube動画・外部の入門講座・自社の過去の広告事例と成果数字で頭に入れる時間を取る。この1か月を「作業ゼロで学習だけ」と割り切れるかどうかで、半年後の到達点が変わる。
  • 2〜3か月:作業実行期間——デザイン領域を中心に、既存テンプレートを使ったバナー修正・チラシ改修・SNS投稿の下書きを任せる。ここでは「型通りにやる」ことが目的で、独自判断は求めない。経営者・営業マネージャー・外部支援者が、毎週の作業に対して細かくフィードバックを返す。
  • 4〜6か月:部分自走期間——制作領域を加え、LPの部分改修やInstagram投稿の企画までを任せる。同時に週次レポートの数字を自分で読み取り、簡単な改善案を出せる状態を目指す。この時期に「数字を自分の言葉で説明できる」段階に到達すれば、育成は順調である。
  • 7〜12か月:数字責任期間——数字管理領域と営業連携領域まで広げ、集客KPI(来場予約数・CPA・反響率)に対して自ら責任を持つ状態になる。営業定例に参加し、お客様の声を吸い上げて次回訴求に反映する回転が回り始める。ここまで来れば、社内に「集客できる広報」が1人育っている。

半年〜1年という時間軸は、経営者の目線からは短くない。だが、経験者を無理に採って半年で辞められるコストと比べれば、確実に安く、確実に会社の資産として残る。

マーケ担当は「採る」ものではなく「育つ環境を作る」もの

住宅会社のマーケ担当採用は、いま多くの経営者が「経験者を採る」の一択で行き詰まっている。しかし、経験者は構造的に採れない、来ても払えない、来ても定着しない。前提を変えて、未経験を育てる方向に切り替えるべきである。

未経験を採るなら、素直さ・情報収集力・細かい作業への適性の3つを見る。採ったあとは、広報業務を4領域に分解し、半年〜1年かけて1領域ずつ渡す。そして最大の投資は、経営者自身が週30分の集客学習を始めること。担当者は経営者を超えては育たない。

住宅会社のマーケ担当は「採る」ものではなく、「育つ環境を作る」ものである。育つ環境の中心にいるのは、担当者本人ではなく経営者。ここに気付けた会社から、集客組織は動き始める。

育てる会社が、勝つ。

AUTHOR- この記事の執筆者 -

代表取締役社長
手塚 恭庸
代表取締役社長
手塚 恭庸

住宅業界向けSaaSの立ち上げからIPOまでをCMOとして牽引。
営業・プロダクト・組織設計まで一貫して手がけ、1,000社超の住宅会社のDXと業績改善に貢献。
コロナ禍ではオンライン販売モデルの構築を支援し、デジタル集客・来場・成約までを仕組み化。
「考える力」だけでなく「やり抜く力」を強みに、机上の空論で終わらせない支援を信条とする。
現在はG-Forceの代表取締役社長として、クライアントにとって外部パートナーではなく、“事業の一員”として本気で成果にコミットするサービスを展開。

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